それは、優子が高校生だった頃。

ちょうど梅雨のこの時期に、
優子は重度気管支喘息を発症した。

いわゆる喘息の重症状態で、
呼吸困難となった。

修学旅行でこの町を訪ねていた優子は、
丁度近くの東都南大学病院に運ばれた。


その時優子を担当したのが、秀頼だったのだ。


優子は秀頼と出会ったときのことを
思い出しながら、嬉しそうに言った。


「あの時、私はこの大学に入って
 もう一度先生に会おうと決めたんです」

「それでこの病院の主治医を
 俺に希望したんだろ。
 もう何回も聞いたぞ、この話」


耳にタコだ、と言いながら、
秀頼はコーヒーをすすった。


「それで?」


秀頼がそう言うと、
優子は「?」と首を傾げた。