そっけない態度をとるべきなのか、
愛想笑いを返すべきなのか、
優子にはわからなかった。
皮肉の一つでも
返してやりたいところだが、
それこそ適当にあしらわれるだろう。
数秒間の間に思考を巡らせて
出てきた言葉は、
「いいんですよ?とめてくれても」
丁度、病院に向かう道と大学に向かう道に
分かれるところだった。
優子の言葉に、
秀頼が足を止めることはなかった。
「俺には関係ない」
そう言って、通勤用入口に消えていった。
関係ない…
言葉こそ冷たいが、
「気をつけろよ」
の意味合いがこもった、
秀頼なりの軽いメッセージなのだろう。
あの大人な余裕には、
やっぱり敵わないと思う優子だった。