街から少し離れた高台にある、
東都南大学病院。

藤原秀頼(ふじわらひでより)は、
そこで勤務する呼吸器内科医だ。

そして、隣接する東都南大学の看護学部で
看護師になることを目指しているのが、
隣に座る、水城優子(みずきゆうこ)


今年2年生になった優子は、
現在試験期間真っ只中だった。


「呼吸器、私一番苦手です」


優子のその言葉に、思わずゴホッとむせた。


「…ッ、なんだと?」

「な~ぜか全然覚えられないんですよね。
 根本的に理解していないから
 だと思うんですけど」

「根本的に理解しなさい。
 気道と肺しかないんだから」

「それができないんですよ!
 苦手意識があるんでしょうね~」

「でしょうね~じゃないだろ。
 喘息なんて、むしろ得意分野じゃないのか?」

「それはまぁ、そうですけど…」


秀頼がそう言うのには、
もっともな理由があった。