家の前に続く道、すなわちそこは、
優子の家の前の道でもある。
その道に続く角を曲がったところで
ずっと聞きたかった声が聞こえた。
だが、目の前にいた優子は、
いつもとどこか雰囲気が違っている。
「先生、まさか今当直明けですか⁉」
そう言って駆け寄ってきた。
これから出かけるところなのだろう。
いつもは下ろしている髪はハーフアップで、
上品な白の半袖セーターに、
グレーのチェックスカート。
髪を留める黄色いリボンが夏らしい。
ただ友人とでかけるのではないことは、
いくら疲れ切っている自分でもわかった。
何か特別な用事なのだろう。
「あぁ」
「こんな時間まで…
お疲れさまです。本当に」
本気で心配してくれているのだろう。
この声に癒されているのも事実だ。
だが…
何かを認めたくない…そんな気がする。