対応患者分のカルテを書き終えて、
医局に戻ってからは、
医学部の授業資料と看護学部の試験作成、
研修医が書いたカルテの確認に、
研究論文をまとめる等…

やりたいことを無我夢中でやり終える頃には、
先程昇ったばかりだったはずの太陽が
今まさに沈もうとしていた。

オレンジ色の光が窓から
射し込みはじめたところで、
秀頼は大きく伸びをした。

いつもなら考えられない集中力だ。

早く帰って風呂に入って寝たい…

そう思い立ったところで、スマホが震えた。

咄嗟に掴んでメッセージ画面を開く。
が、すぐに肩を落とした。


「…潤」


送ってきたのは、
同期の麻酔科医、宮越潤(みやこしじゅん)だった。

『今晩、どう?』

メッセージの最後には
ビールの絵文字が一つ。

『行く』

そう返事をして、
秀頼はまた一つ大きく息を吐いた。

がっかりしているのだろうか。


俺は、何を期待しているんだ…?