『私、出会い探します』

優子がそう言い出したのは、
3日前のことだった。

秀頼は、医局にある革のソファに腰かけ、
スマホの画面を意味もなく眺めていた。

何気なく優子とのメッセージ画面を開く。

一昨日の、

『明後日って何か予定ありますか?』

『当直入った』

『了解です』

が、最後のやり取りだった。

あと数時間もすれば当直が明ける。

すっかり明るくなった空を見て、
秀頼は一つ大きなため息をついた。

あと少しで帰れる。

そんな希望を持った時に限って、
胸ポケットのピッチは震えるものだ。


「はい」

『7階東看護師の谷です。
 705号室の・・・』


秀頼は「すぐ行きます」と返事をして
スマホをデスクに放り出し
病棟に向かった。

なんとなく、今はスマホを持つと
すぐに優子からの連絡を
待ってしまう気がしていた…。


「全く、どうなってるんだ俺は…」