2限目の授業を終えたある日、
優子はいつものように南と昼食を取っていた。
今日は気分を変えて、というか、
作ってきた弁当を忘れただけなのだが、
医学部棟の売店で弁当を買って
ラウンジで昼休憩にしていた。
夏季休暇が入る前に、また定期試験がある。
周りの2年生は、何かと理由をつけて
担当の先生に質問しに行こうと
しているようだった。
それはすなわち、秀頼のことなのだが…。
「あれからすっかり、何かと話題は
"秀頼先生"でもちきりだね」
南がそう言いながら小さな小さな弁当箱の
ご飯を食べながら言った。
そんな量で足りるの?という質問は、
入学して南に出会ってから何十回と
してきたので、今更もうつっこまない。
「ゆっちゃんの、秀頼先生」
「こら、違うでしょ」
優子は平然を装って言った。
周りに聞かれたらただじゃ済まない。
この町は狭いのだ。
病院や大学の噂なんて、
あっという間に広がってしまう。