授業が終わると、森山を押しのけて
秀頼に詰め寄る学生が教卓に溢れた。
秀頼がすぐに帰ろうとしていたのだと
優子はその動きで気づいた。
業務が終われば仕事は終わり。
それが秀頼の考え方なのを知っているからだ。
思わぬ襲来に、
珍しくおどおどしている秀頼を見て、
優子はクスッと小さく笑った。
しかし、そんな優子も他人事ではなかった。
「ゆっちゃ~ん?」
満面のにたにた顔で椅子を滑らせてやってきた。
南が「なるほどねぇ」と
勝手に確信した様子で顔を覗いてきた。
「あの先生が、ゆっちゃんの彼氏?」
「違うよ!」
思わず大きな声が出て、
周囲の何人かが振り返ってきた。
慌てて声を潜めて南に向き合った。
「大きい声出さないの!」
「出したのはゆっちゃんでしょ?」
優子は南の腕を掴んで急いで講義室を飛び出した。
その素早さで、
秀頼が小さく笑みを浮かべていることに
気づくはずもなく…。