ずるい。
聞こえない声で、そう呟いた。
当の秀頼はというと、
平然としたクールな態度で
次の質問に答えていた。
Q.彼女はいるんですか?
A.いません。
Q.どんな人がタイプですか?
A.特にこだわりはありませんね。
Q.どこに住んでいますか?
A.さすがに秘密です。
「次で、最後にしましょうか。
時間も時間ですし。
皆さん、授業に関する質問でもいいんですよ?」
しかし、みんなが知りたいのは
肺や気管のことよりも、
秀頼のことなのだ。
「好きな食べ物や、
毎日欠かさない物はありますか?」
はちみつコーヒー
優子は心の中で呪文のように唱えた。
机の上を少し緊張しながら見つめて、
秀頼の回答を待った。
秀頼は、少し間をとって言った。
「蜂蜜が入ったコーヒー、ですかね」
ちなみにこれは、テストに出ませんよ。
最後の一言にまた笑いが起こり、
"秀頼先生"の授業は終わった。
優子は、にやけて仕方ない顔を両手で隠した。