「お前が嫌じゃなければ、な」

「嫌なわけ、ないじゃないですか!」


優子は秀頼にぐんっと向き直った。


「わ、私は先生にも、
 来いって言ってほしいんです。
 それだけで、なんだって頑張れます。

 それだけで、幸せなんです。
 その、言葉だけ、で…」


緊張なのか何故なのか。
震えて、呼吸が早くなる。

恥ずかしくて、でも伝えたくて。
一生懸命になっている自分が、
なんだか情けない気もして。

肩で息をする優子の背中を
秀頼は落ち着いて優しくさすった。

大きくて、温かい手。


「深呼吸、できるか」


優子は小さく頷いて、
大きく息を吸って吐いてを繰り返した。

優子の呼吸が落ち着いてきたところで
秀頼が言った。


「俺のそばにいてくれないか、水城」


優子の目に、うっすらと涙が浮かぶ。
嬉しいのだ。

心から嬉しくて、仕方ない。

今度こそ、込み上げてきたものが抑えられず、


「もちろんです、先生!」


と優子は両手を広げた。
が、寸でのところで留まって言った。


「あれ、逃げないんですか?」


さすがにまた、調子に乗りすぎだと
止められるかと思ったが。


「あぁ。回帰祝いだ」


両手を軽く広げた秀頼の「おいで」に、
優子はたまらない思いで
その胸に飛び込んだ。


「せんせっ‼」