リビングに入ってすぐ
優子は引き寄せられるようにソファに座った。


「帰ってきた…」


秀頼はジャケットを椅子にかけて
その横に優子の荷物を置いた。


「お前の家じゃないけどな」

「え~ここは第二の我が家ですよ?
 ほら、このソファのこの位置は、私の席です」


優子は改まって背筋を伸ばし、
秀頼に自信満々な顔をして見せた。

秀頼は「ふっ」と小さく笑うと
優子の隣に腰かけた。


「おかえり」


柔らかくて、この上なく優しい声。

久々に見た、おうちモードの先生。

優子はずっと張りつめていた糸が切れて
どっと緊張が解ける感じた。


「ただいま、先生」


今にも抱き着きたい衝動を抑えて
優子は変わりに白いクッションを抱えた。


「まだ、お礼を言っていませんでしたね。
 助けていただいて、ありがとうございました」

「医者として当然だ」


そう言う秀頼の表情は
いつものクールな感じとは少し違った。


「聞きましたよ?
 俺の患者だ、って、
 かっこよく言ってくれたんでしょ?」

「潤のやつ…」


優子はにやっとしながら
秀頼の顔を覗き込んだ。