しばらく会っていなかったが、
相変わらず髪型だけでとんでもなく
おしゃれな雰囲気をまとっている。
ワックスで整えられた真っ黒なパーマ。
それだけなのに医療服雑誌に載る
モデルみたいになっている。
「潤さん!お久しぶりです」
「久しぶり、優子ちゃん。
差し入れ持ってきたよ」
そう言って見せてくれたのは
病院の1階にあるカフェの紙袋だった。
「食事制限ないってヒデから聞いたから、はい」
「わぁ!」
テーブルに置かれたのは、
そこのカフェの名物のタピオカだ。
久々に見た外の世界の食べ物に
優子は感嘆の声を上げた。
「黒糖ミルクとミルクティーどっちがいい?」
「あ、潤さんはどっちがいいですか?」
「俺はどっちも好きだから。
優子ちゃん飲みたい方どうぞ?」
「じゃあ、黒糖ミルクで」
そう言って手を伸ばすと、
潤がクスッと笑った。
「たぶん黒糖ミルクじゃないかって
ヒデも言ってたよ」
「え、先生がですか?」
「そ。一緒に買いに行ったんだ。
あいつも来るはずだったんだけど、
途中で教授に呼ばれて医局行っちゃった」
「そうなんですね。
先生はタピオカ飲まないのかな」
「コーヒー買おうとしたら教授から電話きて
断念して帰っていった」
「ふふ、じゃあ、いっか。
いただきます」
太いストローをさして、口をつけた。
そっと吸うと、黒糖の甘味を感じ
もちもちな食感が口いっぱいに広がった。
たまらず美味しいー!と
心の中で叫びながら味わっていると、
潤が優しい眼差しを向けて言った。
「美味しい?」
「はい!幸せです!」
「よかった。むせないようにね?」
「はい」
タピオカってこんなに美味しかったっけ…
カップの底をストローで混ぜながら
タピオカと一緒に幸せも噛みしめた。
「でもどうして先生は私が黒糖ミルク派って
知ってるんでしょう」
「なんでもお見通しなんじゃないの~?」
潤にいたずらな目を向けられて
優子の心がまた一段階温度を上げた。