泣きじゃくる南を、
看護師が肩を抱いて外に連れていった。

優子の呼吸状態が悪いと告げるアラームが
ただひたすらに鳴り続ける。

秀頼は点滴を取り終え、モニターを睨んだ。
そして、必死に息をしようとする
青白い優子に視線を落とす。

そこに、看護師が呼んだであろう
麻酔科医が到着した。
偶然にも、今日の当直医は、
宮越潤だった。

潤は入って患者を見るなり、
目を見開いた。


「え、この子って…」


潤はハッとして秀頼を見た。

一見冷静だが、動揺しているのは
潤の目には明らかだった。


「ヒデ…」


潤がそう言うのと同時に、
看護師の高い声が響いた。


「サチュレーション80%切りました!」


アラーム音が一段と激しく危険を伝える。


「リザーバー15L!」

「はい!」


秀頼の指示で、看護師が動く。


「流します!」


優子にさらに高濃度の酸素が流された。


「頼む…!」


数秒待っても、数十秒待っても
サチュレーションは回復してこない。


「クソ、だめか…」

「ッ…!」


いつもと様子の違う潤と秀頼に、
周囲の看護師たちも只ならぬ雰囲気を
感じ取り始めていた。