鼓動が一気に激しくなる。
冷たいモニター音よりもずっと早い。
本当に、あいつなのか…?
わかっていても
信じたくないとさえ思ってしまう。
「酸素10L流します!」
看護師の声で、秀頼は再び我に返った。
そうだ。
このモニター音は、優子がまだ
生きていることを証明している。
救急隊員に連れられて、
見覚えのある子が秀頼に近づいてきた。
目にいっぱい涙をためながらも
必死に何かを伝えようとしている。
「息苦しそうにしてから、どれぐらい経った」
優子のそばで他スタッフとともに対応する
秀頼の声は、僅かに震えていた。
「わ、わかりません…
ずっと、我慢してたみたいで。
電話が来て家に行ったときには、
もう…こんな感じで」
顔は見ていないが、泣いているのだろう。
申し訳なさが籠っていることが、
痛いほどわかった。
「それからは、どれぐらいだ?」
「10分ぐらいです」
「…そうか」
厳しいところだが、よく連れてきてくれた。
秀頼は、研修医が苦戦していた点滴入れを
交代した。
南が後ろで続けて言った。
「ゆっちゃん…
先生に迷惑かけられないって言って…
ずっと、我慢してて…
本当は、ずっと苦しかったんだと思います…」
優子の性格は、よくわかっているつもりだった。
だからこそだ。
何故俺は、我慢するなと言わなかったんだ…