丁度患者が運ばれてきたところだった。
救急隊員がマスクで酸素を送っているのを
若手の研修医が交代に入る。

救急の若手看護師がモニターをつけ、
ベテラン看護師は点滴を取る準備に入っていた。


「酸素とりあえず10Lで流して」

「はい!」


周囲に指示を出しつつ、患者に近づく。


「オーダー出して、培養もと、る…」


秀頼の動きが止まった。

意識不明の患者を前にフリーズした秀頼を
スタッフたちが不思議そうに見上げた。

救急で手を止めることはあり得ない。

だが、秀頼はその患者を前に
言葉一つ発することができなかった。


「あの、藤原先生?」


看護師が声をかける。

秀頼は、記録を書く看護師のパソコンを奪い
カルテを確認した。

『水城優子』

その名が大きく映し出されていた。