大学から学生がいなくなって、
早くも月日は流れ、秋が終わりに近づいていた。
オンライン授業が日常となりつつある中、
優子はいつものように授業資料に
目を通していた。
相も変わらず、秀頼とは
会えない日々が続いていた。
もちろん、南にも他の友人にも会えていない。
ただ一つ、嬉しい変化といえば…
秀頼から差し入れへの
お礼メッセージが届いて以降、
何かとやり取りが続いていることだった。
『そんなに続いてるのすごいじゃん!』
南の「きゃー」というハートいっぱいの声と、
オンライン授業の講師の声が混ざる。
授業はこちらの画面も音声もオフなため、
実際どの程度の学生が真面目に受けているかは
怪しいところだ。
南にそれとなく秀頼とのことを伝えると、
講義などお構いなしに
電話がかかってきたのだった。
「続いてるって言っても、
2、3日に一回返ってくるかどうかって
感じだけどね」
『え⁉2、3日にって…すくなっ‼」
「声が大きいって」
笑いながらも一応レジュメの赤字に線を入れる。
「そりゃあまだまだ忙しいんだよ。
むしろ返信させて申し訳ないくらい」
『相変わらず謙虚だねぇ、ゆっちゃん。
私だったら寂しくて耐えられないよ』
「私だって、そりゃあ寂しいよ?」
『えー‼ゆっちゃんかわいい…
そういうのもっと言った方がいいよ』
「直接だったら言えるんだけどなぁ」
『やるねぇ…
あのクールな先生ならそれくらい言われても
大丈夫だって‼
どうせあしらわれるならメッセージでも
攻めちゃえばいいんだって‼』
「あしらわれるって言わないでよぉ」
『あぁ、ごめんごめん‼』
優子と南の笑い声が、部屋中に広がった。
その度に優子は、南という存在の
大きさを実感する。
『ねぇ、私たちもずっと家にいるし、
今度一緒に授業受けようよ!
他の子たちもみんなそうしてるぽいよ?』
「あら、そうなの?
じゃあ明日家来る?」
『行くー‼』
あぁ、可愛いなぁ、南は…。
そう思っていると、
スマホの通知が一つ。
それは珍しく早い返信。
それはずっと待っていた返信。
秀頼からだった。