7月が始まってすぐ、
新しい授業が始まった。
成人看護学、小児看護学、など
病気についてだけでなく、
患者に対する看護を学ぶものだ。
今日から始まるのは成人看護学。
既に厳しいという噂の広がっている
先生が担当というだけに、
授業開始10分前にして
教室は静まり返っていた。
「先生来る前から、空気悪いね」
隣から南が耳打ちしてきた。
たしかに、いつもは先生が来ても
若干ざわついているというのに、
只ならぬ雰囲気が流れていた。
「森山先生だっけ、怖いのって」
「そうそう。
よく何かとケチつけて怒ってくる人」
「あぁ、あの人か」
時折ラウンジを徘徊しては、
学生の気に入らない点に口を出してくると、
優子も噂には聞いていた。