「……」


スマホを置いて、
秀頼は再びため息をついた。

優子との会話は、
『お大事に』と頭を下げるウサギの
スタンプで終わったままだった。

黙ってコーヒーをすする秀頼に
上田は「先生?」と探るような
眼を向けてきた。

「いや、」と断るが、
なかなか聞いてくれないのが
うちの病棟看護師の特徴だ。


「先生、相当お疲れですね」

「そう見えるか?」

「見えます。
 私にできることがあったら、
 なんでも言ってくださいね」

「あぁ、ありがとう」

「うふふ」

「……」


帰ろう。

頬を赤らめてとびきりの笑顔を
向けてくる上田を見て、
秀頼ははっきりとそう意思を固めた。