秀頼にコーヒーを淹れてくれる看護師は
病棟では少なくない。
だが、まさか医局まで来てくれるとは。
しかも、今も他の看護師は
病棟で仕事をしているのではなかろうか。
「はい、どうぞ」
そう言って目の前にカップが置かれる。
「ありがとう」
そう言ってとりあえず口をつけるが、
目の前からの視線に落ち着かない。
これが、あいつが淹れたコーヒーだったら…
久々に飲んだコーヒーは
随分と苦く感じた。
体が甘いものを求めているんだろうか。
いや、違う。
物足りないのだ。
はちみつのほんのり香る甘味。
求めているのは、その味だ。
求めているのは、
優子の存在だ。
「ぁ…」
そういえば。
上田の「どうしました?」に
反応する前に、
秀頼はしばらく見ていなかったスマホを開いた。
優子からのメッセージは…。