「そんなに簡単だった?
 それとも、何かいいことでもあったの?」


南がにやにやしながら詰め寄ってきた。

優子は「なんでもないよ」
と言いつつ、間近で見た秀頼の横顔が
脳裏に浮かんで仕方なかった。


「ほら~にやけてる!
 もう止まんない感じじゃないですか~?」

「いいの!テストが簡単だったの!」

「ほんとにそれだけかな~」


南に横目で怪しまれながらも、
優子は平然を装って問題用紙をしまった。


次の試験は昼食後、
消化器疾患の領域だ。

消化器の授業資料を目の前で開いて、
南に気づかれないように顔を隠した。


南の言う通り、
"いいこと"があったのかもしれない。

帰ったら、先生に報告しよう。

間質性肺炎の副雑音、
ちゃんと解けましたよ、って…。


もう一度口元が緩むのを堪えて、
優子はイレウスの種類を復習した。