「あの、先生…この前のこと、
 なんですけど、その…」


ガラガラと台車を押してくる音に
はっとして、思わず固まった。

誰かが近づいてくる。

怪しまれる前に離れないと…


「あ、やっぱり、なんでもないです。
 すみません…!」


そう言って慌てて病室のドアに
手をかけると、


「…覚えてるよ」


甘い声に、
ふんわりと柔軟剤が香る。