教授たちが部屋を出てから、
優子もナースステーションへ戻り
バイタル測定の結果を報告した。
褒められたアセスメントを
看護師にも復唱してみたが、
「それだけ?」
と返され、
「すみません」
と謝って終了した。
看護師の世の中とは、
世知辛いものだ。
それからもう少し瀬乃と
話しにいこうかと部屋の前にいくと、
向こうから医師が一人歩いてきた。
回診が終わったらしい。
ちょうど瀬乃の部屋の前で
秀頼と鉢合わせた。
「あ、お疲れさまです。
先ほどはありがとうございました」
周りに誰もいないことを確認して
ペコリと頭を下げる。
先生って、こんなに背高かったっけ…
改めて目を合わせるのも
なんだか気恥ずかしい。
「ちゃんと勉強してきたんだな」
「はい、一応…」
「それに、関心した。
あの瀬乃さんと、あそこまで仲良く
なれているなんてな」
「そんなんじゃないですよ。
瀬乃さんには助けられてます」
「すごいな」
渋く穏やかな声に、
ほっと肩の荷が下りた気がする。
優子はもう一度周りを確認してから、
思い切って秀頼を見上げた。
優しい顔が、そこにはあった。
「そういえばさっき、
瀬乃さんに何て言ったんだ?
聴診する前…」
「あぁ、あれはー…」
優子は瀬乃に耳打ちしたことを
思い出して、クスッと笑った。
『どうせ教授に聴かれることになるなら、
このイケメン先生の方がいいのでは?』