まるで骨を包んだだけのような皮膚は浅黒く、
小柄でやせ細った体に、
短い髪は幾分か抜け落ち、
極めつけは目の下の皺が今にもこぼれ落ちそうだった。

この、昔絶対"ワル"だったであろう患者が、
優子の担当、瀬乃里美(65)だ。
疾患は間質性肺炎。


「毎日毎日、あんたらも大変だね」


肺炎の原因は、
この明らかに酒とタバコでやっただろう
という嗄れ声で大方予想はつくが、
長年の過度な喫煙だろう。

ベッドの上であぐらを組み、
好きにやりなと言いたげに腕を伸ばして
ぼーっとテレビを見ている。
その風格は、見えないタバコが見えるようだ。


「お付き合いいただいてすみません」

「構わんよ、仕事だろ」

「ありがとうございます。失礼します」


とその細い腕に触れて、
血圧やら脈拍やらを測定していくわけだ。

昨日初めて挨拶にいったときは
どうなることかと冷や冷やしたが、
話してみればこの通り、
ちょっとツンデレなおばあちゃんだ。