次の日。

2限にあった呼吸器疾患の試験を、
優子は何の問題もなく終えることができた。

問題を解いている間も、
昨日のことを思い出しては
にやけてしまっていたのを自覚している。

90分の試験は、開始30分を過ぎると
解き終わり次第抜けることができる。

優子が試験のあった講義室を出て
ラウンジで出た問題を確認していると、


「ゆっちゃん」


ショートボブの茶髪を揺らして、
坂本南(さかもとみなみ)が駆け寄ってきた。

南は人形のように白く可愛らしい姿とは裏腹に
少しハスキーな声をしているため
呼ばれればすぐに南とわかる。


「南、お疲れ!どうだった?」

「ぼちぼちかな。
 ゆっちゃんは余裕だったんでしょ」

「え、なんで?」


南が両手で持った問題用紙で
口元を隠しながら言った。


「やけに上機嫌な感じで
 部屋出て行ったの見てたもんね~」

「うそっ、そんなだった?」


知らぬ間に、表情だけでなく動きにまで
浮かれが出ていたとは思わなかった。

途端に恥ずかしくなり、耳が熱くなる。


これも全部、秀頼先生のせいだ…。