優雅な寝顔…こっちの気も知らないで。


秀頼の寝顔を見つめるうちに、
優子の鼓動も収まってきていた。

これだからは大人は、何を考えているか
わかったものじゃない。

隙あらばさっきの出来事を
思い出しそうになるため、
優子は気分転換に買い物に出かけた。

コンビニでゼリーやバニラアイス、
スポーツドリンクなどひとしきり買って
秀頼のアパートに戻った。

それから冷蔵庫に買ったものを詰めて、
飲み物をテーブルに並べる。

本当は、おかゆや雑炊を作ってあげたら
(誰かの)理想の彼女的なことができるのかもしれないが。

それはそれで重いと思われるのも怖い。

色んな考えが頭をめぐる。

そして油断した隙に、
あの意地悪で綺麗な笑みと
柔らかい感触を唇に思い出す。

優子は精一杯にやけそうなのを押さえて、
思いっきり伸びをした。

浮かれて実習が疎かになるのはよくない。
秀頼に看護師から叱られているところを
見られてしまうのだけは避けたいところだ。

優子はテーブルを片付け、
最後にそっと寝室のドアを開けた。

綺麗な寝顔に、


あぁ、もう……好きだなぁ…


という心の声を抑えて、
「おやすみなさい」と呟いた。

そしていらない紙に書置きを残し、
優子は静かに秀頼のアパートを出た。