心臓が破裂するほどの
とんでもない破壊力だった。
秀頼から放たれる熱に
優子も一緒になって溺れそうだ。
「は、はい!
まったく、調子狂いますよ」
誤魔化すように無意識に言葉が出てくる。
「しゃーなし、そばにいてあげます」
「あぁ、ありがとう」
「っ…!」
いつもはそんな甘い顔で
ありがとうなんて言わないくせに。
なんとか冷静さを取り戻すために、
今度はやけに口数が多くなる。
「ほんと、こっちまでおかしくなりそうです。
いつもそれくらい素直だったら
いいんじゃないですか?」
ここまできたら、もう止まることを知らない。
「あ、でもモテすぎちゃいますね。
ただでさえ先生、人気者だし。
知ってますよ?いつもクールなのにたまに
看護師や患者さんに微笑みかけるから、
”微笑みの貴公子”って呼ばれてるんですよね?
私はそんな微笑みかけてもらったことなんて…って、わ‼」
「うるさい」
病人の力とは思えないほど強く腕を引かれ、
気づけばベッドの上に…
いや、秀頼の上に乗っかっていた。
「先生⁉」
すっぽりと腕の中に納められ、
赤い顔が、すぐ目の前にある。
どうしよ、息ができない。
「そんな、目で…」
「ん?」
試すように、熱を帯びた目が捉えて離さない。
「先生、おかしいですよ」
「何が」
「だって、こんな…先生じゃないみたい」
「先生じゃない」
「はい?」
「今は、病人だから」
「そう、ですけど」
たしかにそう言ったのは優子だが。
こんな至近距離は初めてすぎて、
もう優子にも行動のしようがない。
こんな幸せ、あっていいのだろうか?
「お前が、看病してくれるんだろ?
看護師さん」
熱で完全におかしくなっているらしい。
それは、この病人も、自分でさえも。
今すぐ天に召されてもおかしくない。