「…すまない」

「いいんですよ」


寝室のベッドで横になった秀頼に
優子はそっと掛布団をかけた。


「様子がおかしいと思ったら…
 だいぶ無理していたんでしょう?」

「そんなつもりは、なかったが」

「医者の不養生」

「情けない」


保冷剤を包んだハンカチを額に当てると、
冷たそうに眉間にしわを寄せた。

その姿が、あまりにも珍しいのか、
優子の母性本能というものを
くすぶられて仕方がなかった。

珍しくしんどそうな様子だが、
申し訳なさそうな表情さえも、
優子にとってはご褒美のようなものだ。

といえば、少し無礼すぎるだろうか。


「先生の言った通りでしたね」

「なにが」

「実習のいい練習になりました」

「たしかにな」


フッと弱弱しく笑う秀頼。

優子は無意識に、
その熱い頬に手を伸ばしていた。


「私にできること、ありますか?」

「いや、もう十分だ」

「……」

「その、十分すぎるぐらい、
 世話になったという意味だが」

「わかってますよ」


いつになく戦闘能力の低いその姿が
またとんでもなく愛おしい。


「病人なんですから、
 もっとわがままになっていいんですよ?」

「……じゃあ、」


額に当てていた腕の下から、
秀頼の潤んだ瞳が優子を捉えた。


「もう少し、そこにいてくれ」