取られた手が、
秀頼の胸に伸ばされる。
「実習の練習は大切だ」
そう言って秀頼が優子を見上げた。
「基本的なのはまずバイタル測定。
ただ数値を見るだけじゃなく、
フィジカルアセスメントをすること」
「フィジカル、アセスメント…」
「大事なのは、
観て、聴いて、触れること」
直接触れて確かめるのも、
看護師に必要なスキルだ。
そう余裕そうに話す秀頼の胸は、
たしかにドキドキしている。
医学的に言えば、
やや心拍数増加。
そして何より、温かい。
見た目では気づかなかったが、
逞しい胸筋がまたずるい。
ましてや優子の意識は
看護的な触診というよりも、
腰に回された秀頼の腕と
見上げるその悪戯で綺麗な顔、
物理的距離の近さに
気を取られていた。
なんてずるい人…
ますます心拍数が上がり、
息苦しくさえある。
そしてついに、
抑えきれないものが、
ポロリと溢れた。
「…すき」