「あーずさ、これ、洋貴君たちから。お見舞いだってさ。」

潤む視界の中、声で柚が入ってきたことがわかる。

「にしても、センターの後でよかったよね。インフルエンザになったの。」

そう、俺はいまインフルエンザに絶賛苦しみ中。

体の異変に気づいたのはセンター試験の三日後、自己採点の結果が朝比奈大の教育学部のボーダーをぎりぎり超えてホッとひと安心した頃。

家で毎日十二時間勉強していた俺は朝起きると体の節々がいたいことに気が付き。

そして襲ってきた、頭を割るような頭痛。

体が気だるくて、熱い。

自由登校が多くなった三学期、学校に行くたびにインフルエンザに注意と言われていたが、まさかほとんど風邪を引いたことのないこの俺がかかるわけ無いとたかをくくっていたらこのざまだ。

「…お前、移るからもういけよ…」

俺のおでこに貼ってある冷却シートを取り替えてくれていた柚に言う。

「あたしはもう受験終ったし、予防接種もしてるから。…梓も注射怖いとか言わずに素直に受けときゃよかったのに。」