唇に柔らかいものが触れてる。

それは花恋先輩の唇で。

先輩から、キスされてる。

その状況を理解するのは難しくて。

「…忘れたいよ…忘れさせてよ…!」

花恋先輩は泣きじゃくりながら、自分の服のボタンを外し始めた。

「花恋先輩…!?なにして…」

顕になっていく、先輩の白い肌。

「…梓君、」

「…っ…」

先輩の手が、俺の手を導く。

初めて触れたそこは、信じられないほど柔らかくて。

一瞬、俺の理性を飛ばしそうになった。

だけど眼の前の、今にも溢れ出しそうな涙をこらえながら、震えている先輩の肩を見て我に返る。

俺はそっと先輩のはだけた服を直した。

「…こんなこと、しないで。先輩。」

「…ごめんなさい、ごめんなさいっ…」

ずっと一人だった先輩。

忙しい父親、暴力をふるう義母。

それを救ったのは、紛れもない、大和という存在だったのは間違いない。

だけど、今は俺がいる。