「先輩…」

「…ごめんね、…気にしないで。」

そうは言われても、気になって仕方ない。

俺はたまらなくなって、先輩を抱きしめた。

「梓、君…」

頼むから、俺を見てよ。

俺は大和よりもかっこよくない。

背も低いし、子供っぽい。

勉強だって、スポーツだって大和にはかなわない。

だけど誰よりも先輩のことが好きだよ。

そんな思い出いっぱいで、なのにそれを言えなくて。

だって今そんな気持ちを伝えたって、先輩の事を戸惑わせるだけだ。

それは高校一年の冬のこと。

それから一年半、まだ俺は花恋先輩を追いかけていた。

自分のしつこさに呆れる。

先輩はこの春から高校からほど近いすみれが丘女学院大学に通っている。

でも女子大だからって安心はできない。

あれだけ可愛い先輩。

きっとモテまくるはず。

バイトも始めるって言ってたし、ますます不安だ。

きっと大学やバイト先には俺より大人っぽくていい男がたくさんいるんだろう。