兄の影響、か。

先生の兄ってどんな人なんだろう?

同じようにミステリアスで大人っぽい人なんだろうか?

「まあ俺も高校三年生のときにはっきりと進路を決めていたわけじゃないよ。多分、君たちの年齢の時点で将来の夢がはっきり決まって大学に行く人なんてそんなにいないよ。」

っ…

なんでバレたんだろう。

俺が一番気にしていたこと。

「実際僕も大学で学ぶようになって、より強く思うようになったからね。」

そう言った神崎の横顔は、相変わらずすごく大人に見えた。


「失礼しましたー。」

数学準備室を出て、考えながら教室に向かう。

大学で学びながら、やりたいことを見つける、か。

でもやっぱり夢があったほうが受験勉強にもやる気が入るよな。

「ただいまー!」

「おかえり。梓、遅かったね。」

面談待ちのために今日の授業は自習。

去年までとうって変わり、みんな真剣にそれぞれワークやテキストに取り組んでいる。