先生になりたいのか、って言われたらうーん、って悩みどころ。

子供は好きだし、人と関わる職に就きたいとは思ってる。

「ま、もうすぐ決定だから、今じっくり悩め!」

そう言われ、職員室を出ると、廊下である人物とぶつかりそうになった。

「ごめんね、前見てなかった。」

数学担当、確か葉の担任の神崎朔。

どこかミステリアスな雰囲気を漂わすこの男は今年の冬、この学校にやってきた臨時教師。

その美しい顔立ちと教え方の旨さ、物腰の柔らかさで人気ナンバーワンの先生でもある。

「せんせー…」

「ん?」

「ちょっといいですか?」

あれ?

俺は神崎に何を聞くつもりなんだ!?

「はい、どうぞ。」

目の前に出されたのは俺の天敵、ホットのブラックコーヒー。

「あ、よければこれも使ってね。」

机に置かれたシュガースティックとミルク。

本当はドバドバ全部入れたかったけど、なんか悔しくて、コーヒーをそのまま飲んだ。