さんざん騒がしいだけだと思ったけど、先輩の笑顔が見れたから、まあよしとしよう。

「じゃあ、ここまでで平気だから。本当に、ありがとう!」

俺、なにか大切なこと、忘れてるような…

あっ!!!

自転車のかごの中に入れっぱなしだった、小さな紙袋。

「先輩!」

俺はその中からバレッタを取り出すと、行ってしまいそうになった先輩を呼び止めた。

「なあに?」

振り返った先輩の肩に触れる。

向かい合う、顔と顔。

そっとやわらかい髪に触れ、パチンとバレッタをつけた。

「お誕生日、おめでとう…花恋先輩。生まれてきてくれて本当にありがとう!」

俺と出会ってくれて、俺に恋を経験させてくれて、ありがとう。

「…梓君、これじゃみえない…見てもいい?」

うわッ!

そうだよ、カッコつけて先輩の髪につけてみたはいいものの、これじゃあ何付けられたのかわかんないよな。

「はい!もちろんです!」