「これください!」

それはバレッタだった。

白いプレートにキラキラとした小さな花の形の石がはめ込まれている。

その花は水色のでまるで花恋先輩みたいにかわいらしくて。

これ、絶対に先輩に似合う!

早く渡したい!

早く会いたい!

初めて買った、先輩へのプレゼント。

俺は気に入ってくれることを願いながらワクワクしていた。

花恋先輩が夏休み、どんな思いで過ごしていたのかも知らずに。

帰り道、大和と別れ際に大和は真剣な顔で言った。

「なあ、梓。お前、花恋の家のこと、聞いたことあるか?」

花恋の、家のこと?

「なんで?」

「いや、ないんならいい。じゃあな。」

そう言うと大和はいってしまった。

なんでこの時、俺は大和に追求しなかったんだろう。

もっと早く、気づいてあげたかった。

できることなら、一番に助けてあげたかった。

なのに俺は、このとき自分のことばっかり考えてて。