どうして、俺の方を見てくれないの?

今一緒にいるのは、俺なのに。

今の彼氏は、俺なのに。

俺は先輩の腕を掴んで歩き出していて。

「梓君?」

驚く先輩の声も聞こえないふり。

どんどん祭りの会場から離れた場所へ。

人のいない裏道に抜け出す。

「梓君、ごめんね…お腹空いたよね。えっと、何か買いに行こう?」

もう無理しないでください。

そんな作ったような笑顔が俺は見たいんじゃない。

なんで泣きそうな顔して、無理やり笑ってるんですか?

「花恋先輩…」

俺は先輩を腕の中に引き込んだ。

先輩の体は柔らかくて、小さくて。

俺自身小柄だけど、やっぱり女の子の体は違う。

「俺じゃ、だめですか?俺じゃ大和の代わりになれませんか?」

一番じゃなくていい。

二番目でも、いいから。

だから、こっちを見てよ、先輩。

「…っ…」

目を背けようとする先輩の頬を両手で包み込む。