にしてもさっきから先輩、なんか元気ないような。

「花恋先輩?どうしたんですか?」

「えっ?…ううん、ちょっと人混みに酔っちゃったのかな。」

「じゃあ、校舎の方、行きません?あそこなら静かだし、人もいないと思います。」

俺は先輩と誰もいない講義室に入った。

「へえ、朝比奈大の講義室って広いね。」

「そうですか?」

珍しそうにあたりを見回す先輩。

なんか、こうやって二人きりになるの、久しぶりな気がする。

最近お互い学祭の準備に追われて、一緒に帰るくらいしかしてなかったから。

…なんか、ちょっと、…

ヤバイ、かも。

「ねえ、梓君。見てみて、ここに面白い落書きがあるよ。」

「どこですか?」

気を紛らわすように食いついたのがバカだった。

ぐっと近づいた先輩の顔。

目があって、恥ずかしくなって、そらす。

そしてもう一度、合わせる。

俺は先輩のほっぺを撫でた。