「ごめん、ごめんな、花恋。つらい思いさせて、ごめん。」

そしてお父さんは美佳さんと話し、結局美佳さんは家を出て行くことになった。

「風花が亡くなって、お前にはつらい思いをたくさんさせてしまったな、でも俺はお前の幸せになることが一番だから。」

お父さんの言葉が氷のように冷たかった私の心を溶かしてくれた。

他にも、梓君にはたくさんのものをもらった。

いつも私のそばで笑っててくれた。

素直に言葉をかけてくれた。

私だけを、見てくれた。

本当の私を受け止めてくれた。

だから、好きになったんだ。



「せーんぱい?どうしたんですか?ボーッとしちゃって。」

目の前にはくりくりした目をキョトンとさせて、私を見つめる梓君。

「ううん、なんでもない。いこっか!」

私は自分から、初めて梓君の手をとった。

可愛い顔とは裏腹に、ちゃんとした男の子の手だ。

大きくて、私の手をすっぽりと包み込んでしまう。