それから一年後、卒業式の日に梓君に告白されて。

その時はまだ私は大和のことを忘れられなくて、断った。

それなのに、それからもずっと私にやさしい梓君。

こんなダメダメな私に、好きだって、待ってるって言ってくれる彼の優しさに心が傾いていくのが自分でもわかった。

「もう付き合っちゃえば?梓君って可愛いし、尽くしてくれそうだし、意外と花恋にあってる気がするけど。それに花恋、梓君の話するときいつも楽しそう。」

妃咲に言われて、たしかに思い当たるふしがあった。

梓君といると、なんていうのかな。

自然体でいられるっていうか、ありのままの自分でいられる。

告白されて、でも私は中途半端な気持ちでいる間は梓君のことを受け止められなかった。

その時私はちょうど、家のことでも悩んでいて。

もうなにもかも、どうすればいいのかわからなくなって。

広い家に、ひとりぼっち。

ダッシュボードの写真立てに飾られたお母さんの笑顔。