私は自然と落ち着いていて。

これからされる話も、もう全部わかった気がしていたから。

「…うん、なに?」

わかってたことなのに。

もうすぐ、私達は終わっちゃう。

「…別れよう、俺達。」

わかってたのに、どうしよう。

ダメだよ、花恋。

泣くな、花恋。

私は必死で目に力を入れて、溢れだしてきそうなものをこらえた。

「…わかった。今までありがとう、大和。」

「こちらこそ、ありがとう、花恋。」

最後に名前を呼ぶなんて、ズルいね。

「送っていくよ。」

私は首を横に振った。

「一人で平気。」

そして後ろを向かずに、大和を見ずに、歩き出した。

寒い。

冷たい冬の風が頬に突き刺さって、いつも以上に寒い。

好きだった。

大好きだった。

ううん、違う。

今でも、大好きなの。

全部全部、覚えてるのに。

消えない記憶が蘇ってくる。

笑った顔も。

クリスマスにくれたお菓子も。