急に、ぐだっと力が抜けて、その場に座り込んでしまった。
「あーあ。もう座っちゃうの?」
「え……?」
何、言ってんだろ、この人……。
「あ、の。ぶつかってすみません……。でも、あの……私の背中、触る必要ありましたかっ……?」
確実にその時間は必要なかったと思う。
それに、この人制服着てるからここの生徒だよねっ……?
今は授業の時間なのに、なんでこんなところに。
「あったあった、必要。ま、ぶつかった代金って思っといてよ。背中ちょっと撫でただけなのにあんなカワイー声聞いちゃったし」
な、なにそれ……。この人、もしかして変態なの?
ぐ、と頭を上げて相手の顔を見てみると。
「……………え、」
ようやく……
「何?なんかついてる?」
「……見つけた」
「え?」
──────この人は、ターゲットの涼川 那生だ。
こんなところで、会えるなんて……。
ずっと写真で見てた本人が、目の前にいる。
嬉しすぎて、今にも叫びだしてしまいそう。
さっき触られて、震える腰をなんとか持ち上げ立ち上がる。
「あの。もしかして……涼川 那生先輩……ですか?」
私が言葉を発すると、彼の目が見開かれた。
だけどそれは短い時間で、すぐにすぅっと三日月型に細められる。
「俺のこと………知ってんだ?」
あ、れ……?なんか、迫ってきてる?