急がなきゃっ。


勢いよく、角を曲がった瞬間。




────────ドンッ。





「きゃっ……」



誰かに、ぶつかった。


勢いよくぶつかったせいで、後ろに身体が傾く。



あ……やば。受け身の姿勢が取れない……!



ぶつかったことに驚き過ぎて、反応できなかった。


これから来るだろう痛みに備えて、目をギュッと瞑る。



あ、れ………?痛みが来ない。


恐る恐る、目を開けると。




「……!」




お、男の人の顔が……間近、に……。


どちらかが動けば、唇がくっついてしまいそうな距離。


って、私なんで痛みが来ないの……?


そう疑問に思ったとき。




「ひぁ………っ」




ぞく、と背中に走った刺激。



「へー……可愛い声出すね」




スルリと、私の背中で動いていたのは、彼の手だ。


こんなことは初めてで、どうしていいか分からなくなる。


固まっていると、今度は背筋のあたりをツーっと撫でられた。



「う……ぁ」



背筋をつたってきた指が、腰のあたりで動いて、声ガ抑えられない。


いきなり……なに……?この人、誰なの……?


離れたいけど私は今、彼に支えてもらっている状態。


下手に動いたら、今度こそ転んでしまう。



途端、手の動きが激しくなった。


何回も背筋を撫でては腰のあたりを触るの繰り返し。


それがなんだか気持ちよくて、何かわからない涙が滲んでくる。




「何その顔。かわい」


「や、ぁ………も、むり……っ」