真新しいブレザーに袖を通して、「花咲 美織」と書かれた名札を付け、スカートは2回折ってはく。


最後に、胸ぐらいまで伸びた、少し癖っ毛で緩くパーマがかかったような髪をくしでとぐ。


これで身だしなみはOK。


一応、鏡の前で確認。


うん、バッチリ!



「今日こそ、ターゲットと出会えますように」



家を出る前にお祈りして、学校へ出発……といっても、この天宮学園は全寮制。


学園はすぐそこだ。


元気よく家を出て、昇降口を目指す。



私、花咲 美織(はなさき みおり)。


今年、この天宮学園に入学した高校1年生。


平凡で、普通の女子高生………って言えたら、どんなに嬉しいだろう。


私の家は、表側は大手の商品企業。でも………裏側は、スパイ。



代々、お父さんの家系がスパイで、お母さんはスパイと全く無関係だったけどお父さんと結婚したことで、スパイになった。



そして、2人の間には私しか子供がいなくて、必然的に私もスパイとしてそだてられ。




少し前に、ある男性の弱みを握りたいと依頼が来て、





『弱みを握るのは簡単な依頼だから、初めての任務にちょうどいい。それに美織の一つ年上だ。ターゲットのいる天宮学園に入学しなさい』




とのこと。



私は、この時のために昔から厳しい訓練を強いられてきた。


でも……ようやく役立つときが来たんだ。


絶対に失敗できない。


お父様の期待を踏みにじるなんてことをしたら、私はどうなるかわからない。