「なにそれ!」

「俺、なぜかお前の言うことにそむきたくなんだよなぁ。……だから、したいっていったらしないであげる」

「……っ、」


にやっと口角をあげた彼に背筋が凍る。意味が分からないことを言っているはずなのに、“新常識”と言わんばかりに堂々と語られれば私は簡単に困惑してしまうんだ。


「い……言うわけないでしょ。ばか……」


しどろもどろに呟いて目を逸らす私に余裕の笑みを見せた疾風。

「じゃあ、早速おそっちゃお~」という軽薄な声色と共に、彼の長い腕が私の体を拘束した。


「ちょっ?!なにしてんの……ひゃっ!」


刹那、耳の裏に感じた温い湿り気。

(な、舐められた?!今……耳をペロって!)

あまりの衝撃に固まる私に「言わないってことは、まだしていいの?」とさらに甘く響く声を吹き込んで。

パクリ。今度は耳の縁を甘美な痛みが走り抜けた。


「言えよ」

「……っ、」

「それとも、こんな場所でもっとスゴいことされたい?」


まだ耳たぶを這うような距離にある唇が紡ぐのはそんな言葉。

私の中の余裕は全て奪われて、著しく判断力が低下した脳は唯一の突破口を私に示した。


「ししししし、したいです!」

「了解。じゃあしよ?」


ニコッと可愛い笑顔で言う疾風。私は、話が違う!とお口あんぐりだ。


「なんで!言ったらしないんでしょ?」

「は?そんなこと言ってねぇし。勝手に決めんな。俺は俺の好きなように動く。指図すんな」

「はいぃ?」


……なんなの、この人!言ったでしょうが!私が「したい」って言ったらしないでくれるって、はっきりと!

頬にたっぷりの空気を含んで抗議の意思を示しても、何食わぬ顔で惚けるこの男……。

こんなやつと1週間とかほんとに大丈夫ですか?