マイノリティーな私の声は誰にも届かず、着実にパパとママたちは玄関の扉へと遠のいていき……


「じゃあ、火事には気を付けろよー?」


なんてことを言いながら家から出ていく疾風の両親と私のパパ。そして……


「どうせ結婚するんだから、ヤることヤちゃいなさいよ?」

「はっ?!」

「じゃあ行ってきまーす」

「ちょっと……!ママ!」


最後に要らないことを言い捨てて出て行った気狂いな母を追って、閉じたばかりの玄関扉を開けたけれど……時すでに遅し。


「……勘弁してよぉ〜」


目の前を切なく通り過ぎる大きなワゴン車を見つめ、力無い声がこだました。

(ああ、もう本当。誰でもいいから嘘だと言ってぇ……)


「そんなに嫌かねぇ。俺と一緒」

「……っ、」


ドアノブに手を添えたまま、呆然とフリーズする私の後ろから伸びてきた手がドアを閉める。


「諦めろって。あの人たちが、今更やめると思うか?」

「……思わない、けど!」


おっしゃる通りなご意見。半ば八つ当たりで声を上げて振り返ると、思ったよりずっと近い位置にあった顔に押し黙った。

見慣れたはず顔は今日も綺麗だ。……でも、何故だか今日は一層にかっこよく見える。

つい、我を忘れて見つめてしまえば、ニヤリと彼の唇が弧を描いた。


「なぁに。みとれてんの~?」

「……っ!み、みとれてない!」


我に返ってキッと疾風を睨みあげるけれど、目の前の彼はダメージを受ける様子もなく。

悔しくて、「疾風、自分の家に行ってよ!」と強気で言い返してみれば、「お前が俺んち行けば?」と鼻で笑う疾風。

なにその顔。なんかむかつくなぁ……なんて、ムムムと顔を顰めつつ、


「いいよ!疾風がここに住むなら、私が疾風ん家で暮らしてやる!」


そう言い放って私は、勢いよく家を飛び出した。