〜結愛side〜

「結愛,何部入るか決めた?」
入試して1週間が経った。そっか。そろそろ部活の仮入部始まるな。
「うん。バド部入ろっかなって思って。香穂は?」
私は中学時代はテニス部やったというだけで高校でバドミントンするってずっと前から決めてた。バドミントンなら室内でできるしテニスみたいに真っ黒にならんで済む。それに楽しそうやし。
「うーん。まだ何部入るか決まってへんのよね。」
「香穂なら運動部どれでもいけそうやね。マネは?」
「いやマネはなぁ…多分私に向いてへんのよな。」
「なんで?香穂美人やから絶対大丈夫!」
マネージャーをやる人は美人な人や可愛い人がやるイメージがある。偏見でごめんなさい。
「顔じゃないんよぉ。私絶対みんながスポーツしてるの見てたらやりたくなってくるんよ。私運動部入るなら絶対選手側が良い!」
そうやった。香穂は運動神経抜群でスポーツ大好きスポーツ少女。中学時代はソフトボール部でピッチャーをやっており,キャプテン且つエースをやっていた。香穂の代はあまりにも強すぎて県大会は余裕で突破,それから近畿,そして全国まで昇り詰めた。優勝まではしてなかったけど全国まで行けたのが凄い。私なんて中学時代はテニス部やったけど部自体そんなに強くなかったし,私は弱いしよく負けてたし,そんなやった。
「じゃあさ,一緒にバド部入らん?私香穂いると心強いなぁって思って。」
「バド部?あー…。」
うーんっと暫く香穂は迷った顔をして急にパァっと明るくなり,
「うん!それいいな。いいよ!一緒にバド部入ろ!」
「やったー!香穂なら絶対すぐ上手くなる気がする。」
「一応私球技経験者やからね。それに毎日弟のボール取ってるし。」
「そっか。弟くんずっと野球やってるもんな。それに香穂も毎日練習に付き合ってあげてるもんね。」    
「えっへーん。早い球なら任せて!」
「うん!」
香穂とクラスも部活も一緒はだいぶ強い。今年1年は平和に終われそう!良かった!

〜伊織side〜

「なあなあ伊織。何部入るー?やっぱ中学と同じサッカー?」
「かなぁ。洸も?」
他のスポーツでもいいかなって思うけど小学校からサッカーやってるというのもあってやっぱり部活入るとしたらサッカー部かなぁ。
「あたまえ。だってそれしか俺スポーツ出来ひんもん。それにサッカー部ってだけでモテそうやし!」
「んな訳あるかい。そんなん漫画の世界だけや。現実見ろ現実。」
「チェ,モテる男はいいよなぁ。」
洸は俺のことなんでこんなにモテる男って言ってくるんやろ?確かに何回か告られたことあるけどタイプじゃなかったから全振りして気付いたら高校生。彼女なんて一回もできたことない。なんなら告ったこともない。洸も中学のときいろんな女の子と仲良くしてたから割とコイツはコイツでモテてたと思う。
「なあなあ。サッカー部ってマネおるやん?」
「あー,おるなぁ。でそれがどうしたん?」
「あの子ら誘わへん?めっちゃ可愛いやん。」
洸が2人組女子の方を指差す。確かに悪くはない…ってあれ?2人のうち1人,俺が今気になってる子やん!え?ちょっと待って。これ上手いことサッカー部マネージャーに誘えたら一気に距離縮まるんちゃうん?洸,お前たまにはいい事言うやん!ナイス!
「いいやん。誘おうや。」
「え?あ,うん。」
なんか俺の反応に戸惑ってる。なんでやねん。
「お前,いつもそんなんやっけ?」
「何が?」
「いやぁいつも『いきなり知らん女の子に話しかけんな!』とか言ってくるからさ。今日はやけに乗り気やなって思っただけ。」
「そうか?俺いつも通りやと思うけど。」
洸…お前ホンマいらんときだけ感鋭いよな。なんやねん。ガチで。
「いいやいつも通りちゃう!いつも俺のことやめとけって止めてるもん。もしやお前,あの中に好きな子おるな?」
なんでこういう時だけ分かんねんコイツ!
「はぁ?何言ってんの?おる訳ないやん。」
「いいやおるなこれ。どっち?あ,でも伊織ほんわかしてる感じの子が好みやから背が低い方か。なるほどなぁ。」
クッソォ…。いらんときだけ賢くなるんホンマなんなん?こいつの脳どうなってんの?エスパー?
「いいやんか!あの子可愛いし。それにお前の前の席の子やろ?」
「ッ…。」
見事に全て当てられて返す言葉が見つからんのが悔しい。
「あ,図星?いいやんいいやん。俺応援すんで。」
「あーそうですかぁ…、どうも。」
「ほら,声掛けてきいな。早よ早よ。」
「ちょ押すなって。てかこういうの俺よりお前の方が得意やろ。」
「早よ行って来いって。お前が声かけて来い。大好きな子とお話しできるチャンスやで?ええん?これ逃して。」
あーーー!!クッソォ!!!!そういうのやめろって!俺は今日こんなんで洸に負けるのが勉強で負けるよりよっぽど悔しいってことが分かった。

〜結愛side〜

昼休みになり,私は香穂と一緒にお弁当を食べようとしたとき,
「あ,あの…ちょっといいすか?」
急に誰かが私たちのところに話しかけてきた。誰やろ?って思ってその人の方を見ると相手はなんと私が今気になってる男の子。え?どゆこと?なんで?
「はい?どうしましたか?」
何も気にせずにサラッと男子の相手ができる香穂がちょっと羨ましい。
「えっと…あの…お2人さんってぶ,部活って何部入るか決めてますか?」
「決めてますけど。なにか?」
するとその人は急に頭を下げて大きな声で,
「あの!もし宜しければサッカー部のマネージャーになっていただけないでしょうか?」
え〜!?いきなりすぎる。
「あの…お気持ちは嬉しいんですけどなんで私たちなんですか?」
少し険しい声で香穂は返答する。
「えっと…いやぁお2人さんってめっちゃ可愛いじゃないですか?それに俺も貴女がたにマネージャーやってくれたら嬉しいなって思いまして…。」
「分かりました。お断りさせていただきます!わざわざお声がけていただいたのにごめんなさいね。私たちもうバド部入るって決めてるんで。では。」
香穂にあっさり断られてしまったその人はキョトンとした顔をしていた。なんかちょっと可哀想。
「結愛,行くで。」
「あ,うん。」
(結局私何も口出しできひんかったな。)
せっかく声をかけてくれたのにそのチャンスを台無しにした私。香穂にはちゃんと事情話そうと思った。これは仕方がない。香穂は別に悪くない。

「か,香穂…。あのさ…。」
「ん?どしたん?」
手を洗いに行くついでに私は思い切って香穂に言うことにした。
「私今気になってる人いるねん。」
もうこうなったら言ってしまえ!香穂は別に他人にペラペラ話すような子じゃないから大丈夫。
「え?誰?この学校?」
「うん。」
「え!?誰?何組?」
「4組。」
まさかの同じクラス!?と思ってるんやろうな。開いた口が塞がらないとはこういうことをいうんやろうか。とにかく香穂はポカーンと口を開けたままほんの数秒固まってた。
「でもこのクラス同じ中学の人そんなおらんで。」
「あ,中学は違うんよ。」
「あ,そうなん!?えちょっと待って。ますます気になる。どんな人?」
「えっと…さっきサッカー部のマネージャーに勧誘してきた人。」
と言うと香穂はさっきとはまた違う,凄く申し訳なさそうな顔をして,
「嘘!?えっ…ガチごめん。私結愛があの人のこと気になってるとか知らんくて…ちょっと待ってホンマにごめん!!」
「いいよぉ。私やって何も話してなかったんやし。それに席も前後なんやけど話しかける勇気なくて…さっき話しかけてくれたとき私も何か言えば良かった。」
「いやこれは私が悪い。私がズカズカ言ってしまったせいで…。」
シュンとした顔。普段香穂は明るいからそんな顔滅多にしない。
「香穂,これは別に誰が悪いとかないから。気にせんといて。」
「気にするよぉ。さっきの人に謝りに行かな…。」
お?待って。まだその手があるやん!謝って距離縮めて仲良くなる。今昼休みやしチャンスや!香穂ありがとう〜!!
「香穂!まだ手はあるから大丈夫やで!」
「え?」
私は今自分が考えた作戦を香穂に全部話した。すると香穂はさっきみたいなショックな顔からパァっといつもの明るい顔に戻った。
「そうやな!!まだチャンスあるやん!」
私たちは早速作戦を考えた。

〜伊織side〜

「やーい伊織振られてやーんの!」
「うっさいわ。まだそうと決まった訳ちゃうし。」
さっき勇気振り絞ってあの子らサッカー部のマネージャーに勧誘したけど背の高い美人にあっさり断られてしまった。そりゃそうよな。いきなり知らん男に話しかけられたら誰だって警戒するわ。もうちょっといい方法なかったんかなぁ俺。ホンマあほや。
「食べへんの?弁当。」
「食べる気にならんわ。」
「そんなに!?ただ断られただけやん。おっしゃ。帰り俺がスタバ奢ったる。」
「え?ガチ?」
「ただし安いやつな。」
「それでもいい。あざす!」
「早よ食え。午後倒れんぞ。」
「おう!」
俺はなんて単純なんやろ。スタバに釣られてしまった。まあ誰だってそう言われたら喜ぶか。
(せめてあの子だけでも誘いたかった…。)
俺は深〜い溜息を吐いた。
「まあ,大丈夫やろ。嫌われたって訳ちゃうし。気にすんな。」
洸はそう言ってくれてるけど実際は分からん。女の子って気安く話しかけたりする男嫌ったりする子もおるから。あの子も絶対そういうタイプや。

〜結愛side〜

「いい?香穂。まず私が話しかけるからそのあと香穂が謝る形でOK?あと私のフォローお願いします!!」
「OK。これで結愛とあの人の距離縮めんで。」
香穂はめっちゃ真剣。いつも私のことになると本気になってくれる。小さい頃から私が男の子たちに虐められたりしたら怒って駆けつけてくれたり泣き虫で弱虫やった私をいつも慰めてくれた。
私は深く深呼吸してあの人たちのところに向かった。
「よし。」

〜伊織side〜

「まだ落ち込んでんの?いいやんかまた話す機会あるって。」
「洸,俺は今,人生最大の失恋をした気分。」
「そんなに?」
「絶対さっきのやつでドン引きされたぁ〜。俺終わりや。」
俺はなんでか分からんかったけど今日の失敗を未だに落ち込んでた。すると…。
「あ,あの…。」
なんと!?あの子自ら俺らに話しかけてきた。バックには背の高い美人もいる。
「は,はい!?ど,どうしましたか!?」
俺の慌てた反応に洸はプスーっと笑って
『何そんなビビってんねん。』
って顔された。洸,あとで一発しばく。
「さっきはサッカー部のマネージャー勧誘ありがとうございます。」
「あーいえいえ。俺こそ急に変なこと言ってしまってすいませんでした。」
「そのことなんですけど…。」
すると後ろから美人が顔を出して
「さっきは酷い言い方して勧誘断ってごめんなさい!」
と頭下げてきた。
「あー!!いやそんなん,俺が悪いんで気にしないでください。」
「おいお前,さっきまで断られたぁ,人生最大の失敗やぁみたいなこと言ってたくせに。」
テメェおい洸コラ,いらんこと言うな。
「そんな気持ちにさせてホンマごめんなさい。」
「いやもう大丈夫すよ。もうお気になさらず。あ,俺今岡中出身の中山伊織です。もし2人が良かったら友達になりませんか?」
「え!?是非!結愛は?」
「うん!」
と笑顔で頷いてくれた。いや笑顔可愛すぎんか?
「あ,私は松来中出身の相田香穂です。香穂って呼んでください!」
「私も香穂と一緒の中学出身の中尾結愛といいます。私のことも結愛って呼んでください。」
「はいはーい!俺の名前は寺橋洸。洸って呼んでな。苗字呼びは許さんで!」
改めて洸のコミュ力の高さに尊敬する。ほんま凄いわコイツ。
「あ,そうや。2人も俺らと一緒にお昼食べへん?あと今日から伊織も香穂も結愛も敬語禁止な?友達なんやから!」
「了解!」
美人もコミュ力高いな。気が合いそうやな,この2人。俺はチラッと結愛の方を見た。すると目があったので,
「そういやさっき部活何部入るか決めたって言ってたけど中尾さ…結愛は何部入る予定なん?」
「あ,私?えっと…中学がテニス部やったってことでバド部入ろっかなって思ってて。中山…い,伊織はサッカー部?」
「まあ…。小学校の頃からやってたしな。結愛はテニスやってたんか。」 
「下手くそやったけどね。香穂はソフトボール部のエースやってめっちゃ凄かったんよ。香穂も高校ではバド部入る予定なんよ。まあ私が入ろって誘ってんけどね。」
やべー緊張する!!

〜結愛side〜

めっちゃ緊張する!!でも今気になってた人,伊織と話せて嬉しい!こんな奇跡あったんや!
「バド部か。いいな。結愛にぴったりやと思うで?」
「そ、そお?なんか伊織に言われたらそうかなって思える。」
「何や嬉しいなぁ。そんなこと言ってもらえるなんて。俺他のスポーツもやるか迷ってるんよなぁ。まあほぼサッカー部入るの確定やけど。」
「…私,伊織がサッカーやってるところ見てみたいなぁ。なんちゃって!」
私何変なこと言ってるんやろ?あとバドミントン私にピッタリやって。嬉しすぎる!

〜伊織side〜

なんちゃって!?いや可愛すぎんか!!仕草も言葉も可愛い!いやもう結愛の全部が可愛い!絶対俺の彼女にしてやる!あと俺がサッカーやってるとこ見たいって!?全然見せるよ?いつでも見せるわ。あ,もう俺サッカー部入ろ。決めた決めた。あ,ヤバ鼻血出そう。

〜結愛side〜

そのあと私たち4人は一緒にお昼ご飯を食べて今日の放課後一緒に帰った。みんなでショッピングモールに寄り道してスタバを何と伊織に奢ってもらってご馳走になった。

この日はお互い一生忘れない日になった。
初めて話した記念日として。日付もな。

2022年 4月15日 2人の一生の特別で思い出の日。

コツ,コツ,コツ
「誰あのイケメン?」
「やった!今日もあのイケメン朝から見れた!」
「キャー!カッコいい!」
「今日も王子様拝めたぁ。」
新1年生として今年入学してきた1人のとある少年。彼はいわゆる『学園の王子様』ポジで4月最初の時点で学校で有名になっていた。