4人目の客はリピート3回目のチャラそうな見た目のキムラさんだ。
プレイが終わりシャワーを浴びてタイマーを確認すると、少し時間が余っていた。
素っ裸からブランドのロゴが入ったニットに着替え、マットレスに座ったキムラさん。
「ユキちゃんはさ、何でこの店を選んだの?」
電子タバコを取り出したキムラさん。
喫煙者用に常備されている携帯灰皿を渡して隣に座る。
「風俗の求人サイトで検索をかけたら、このお店が1番上にあったんです」
「この店、有名店だからね。歌舞伎の箱ヘルだと高級店だよ。バックもその辺のデリより全然良いんじゃない?」
「私、このお店でしか働いたことがないから、デリヘルのバックとかよくわからないや」
強にした換気扇は、キムラさんの吐いた煙を吸い込んでいく。
「ユキちゃん、勿体無いなぁ。ユキちゃんならもっと上のレベルのデリでガンガン稼げるのに。オレ、実はスカウトなんだよね。採用基準が厳しい高級デリでも、ユキちゃんなら余裕だよ。芸能人とかスポーツ選手も利用するデリ。どう?体入だけでもしてみない?」
「キムラさん、ごめんね。私、このお店が気に入ってるの。お客さんも店長もみんな優しいんだ。だから、他のお店に興味はないよ」
キムラさんはまた、勿体無いなぁ、と煙を吐きながらクラッチバッグから紙切れを取り出した。
「これ、オレの連絡先。オレもユキちゃんなら自信を持って他店に紹介できるからさ。まぁ、気が変わったら連絡してよ」
手渡された紙切れには、電話番号とLINEのIDが書いてある。
丁寧に断ったつもりなのに、通じない少し面倒臭い人だ。
タイマーが鳴り、内線の受話器を取る。
キムラさんは最後までしつこく『連絡待ってる』と言っていた。
スカウトが風俗店を利用するのは問題ないけれど、引き抜き行為は禁止されている。
キムラさんの連絡先が書いてある紙切れを小さく千切ってゴミ箱に捨てた。
ふと置き時計を見ると、22:58。
…ラスト60分、埋まらなかったんだ。
体育座りをしてぼんやりと置き時計を眺める。
これから先も埋まらない日があったらどうしよう、そんな不安が込み上げてくる。
ため息がこぼれた時、ドアをノックする音が聞こえた。
ーーーーーーーー
内線は鳴っていない。
なんだろう、と思いながらそっとドアを開けると、店長が入ってきた。
「ユキちゃん、急でごめんね。今から60分入るんだけど、その人はお客様じゃないからプレイしなくていいからね」
いつもと違う、少し慌てた様子の店長。
意味がわからなく、首を傾げる。
「説明不足でごめんね。今から60分コースで入る人がいるんだけど、その人は店に用事があってお客様じゃないんだ。だからプレイはしなくて大丈夫。一応いつも通り、接客する姿勢は見せてくれるかな。その人はプレイを断ってくるだろうけれど、気にしなくて良いからね。もちろん、60分コースのバックはきちんとお給料に加算させて頂きます。お願いしても平気かな?」
どんな理由であれ、ラストの60分が埋まる。
「大丈夫です。お願いします」
焦っていた様子の店長はホッとした表情に変わる。
「ありがとう、ユキちゃん。今話した内容はオフレコでお願いします。後少ししたら内線を鳴らすから、ラスト60分コース、よろしくお願いします」
ドアが閉まる。
いつも通り、髪の毛を整えてグロスを塗り直す。
23時ぴったりに内線が鳴り、ノック音が聞こえた。
ラストの60分が埋まって良かった。
心の中で安堵しながら、口角を上げてドアを開けた。
プレイが終わりシャワーを浴びてタイマーを確認すると、少し時間が余っていた。
素っ裸からブランドのロゴが入ったニットに着替え、マットレスに座ったキムラさん。
「ユキちゃんはさ、何でこの店を選んだの?」
電子タバコを取り出したキムラさん。
喫煙者用に常備されている携帯灰皿を渡して隣に座る。
「風俗の求人サイトで検索をかけたら、このお店が1番上にあったんです」
「この店、有名店だからね。歌舞伎の箱ヘルだと高級店だよ。バックもその辺のデリより全然良いんじゃない?」
「私、このお店でしか働いたことがないから、デリヘルのバックとかよくわからないや」
強にした換気扇は、キムラさんの吐いた煙を吸い込んでいく。
「ユキちゃん、勿体無いなぁ。ユキちゃんならもっと上のレベルのデリでガンガン稼げるのに。オレ、実はスカウトなんだよね。採用基準が厳しい高級デリでも、ユキちゃんなら余裕だよ。芸能人とかスポーツ選手も利用するデリ。どう?体入だけでもしてみない?」
「キムラさん、ごめんね。私、このお店が気に入ってるの。お客さんも店長もみんな優しいんだ。だから、他のお店に興味はないよ」
キムラさんはまた、勿体無いなぁ、と煙を吐きながらクラッチバッグから紙切れを取り出した。
「これ、オレの連絡先。オレもユキちゃんなら自信を持って他店に紹介できるからさ。まぁ、気が変わったら連絡してよ」
手渡された紙切れには、電話番号とLINEのIDが書いてある。
丁寧に断ったつもりなのに、通じない少し面倒臭い人だ。
タイマーが鳴り、内線の受話器を取る。
キムラさんは最後までしつこく『連絡待ってる』と言っていた。
スカウトが風俗店を利用するのは問題ないけれど、引き抜き行為は禁止されている。
キムラさんの連絡先が書いてある紙切れを小さく千切ってゴミ箱に捨てた。
ふと置き時計を見ると、22:58。
…ラスト60分、埋まらなかったんだ。
体育座りをしてぼんやりと置き時計を眺める。
これから先も埋まらない日があったらどうしよう、そんな不安が込み上げてくる。
ため息がこぼれた時、ドアをノックする音が聞こえた。
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内線は鳴っていない。
なんだろう、と思いながらそっとドアを開けると、店長が入ってきた。
「ユキちゃん、急でごめんね。今から60分入るんだけど、その人はお客様じゃないからプレイしなくていいからね」
いつもと違う、少し慌てた様子の店長。
意味がわからなく、首を傾げる。
「説明不足でごめんね。今から60分コースで入る人がいるんだけど、その人は店に用事があってお客様じゃないんだ。だからプレイはしなくて大丈夫。一応いつも通り、接客する姿勢は見せてくれるかな。その人はプレイを断ってくるだろうけれど、気にしなくて良いからね。もちろん、60分コースのバックはきちんとお給料に加算させて頂きます。お願いしても平気かな?」
どんな理由であれ、ラストの60分が埋まる。
「大丈夫です。お願いします」
焦っていた様子の店長はホッとした表情に変わる。
「ありがとう、ユキちゃん。今話した内容はオフレコでお願いします。後少ししたら内線を鳴らすから、ラスト60分コース、よろしくお願いします」
ドアが閉まる。
いつも通り、髪の毛を整えてグロスを塗り直す。
23時ぴったりに内線が鳴り、ノック音が聞こえた。
ラストの60分が埋まって良かった。
心の中で安堵しながら、口角を上げてドアを開けた。