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アンティークな雑貨やインテリアを集めるのが、私の趣味だった。フランスの100年前のティーセットや、椅子やテーブル、小さな置物、ジャム入れに使っていた古い瓶に花生けてみたり……。昔、両親が喧嘩をすると、よく近くの祖父母の家に逃げていた。大正時代からあるそこには、古い骨董品がたくさんあって……。その影響で、大人になってからアンティーク品を好きになったのだと思う。


そこで、たまたま可愛らしい花模様の大皿を見つけたので、私はそれを購入しようと手を伸ばした。伸ばした隣に何故か、男性の手。顔を上げると、まるで彫刻のような綺麗な顔立ちの男性がいた。二人で同じものを買おうとしたらしい。


「あの、どうぞ……」


私は引き下がった。立派なコートを着ていた男性で、気品すら感じる。怖気付いてしまった……と言うべきか。この人には、私よりこのアンティークが似合うと思ってしまった。


「いえ、俺は別のを見るので、いいですよ」


男性は私に、大皿を譲ってくれようとする。


「あの、大丈夫です。それでは……」


私はすぐお店を立ち去った。ドキドキした。あんなに綺麗な男性が、この世にいたのかと思って。ああいう人にアンティークが似合うんだ。私みたいな、一般社員の、少ない給料でコツコツ買ってる人間より、あの気高さのあるあの人の方が……。


そうしてまた数日経ってから、お店へ訪れた時、待っていたかのように、あの綺麗な男性がいた。