「冗談冗談」と私は軽く多希くんをからかう、多希くんは困った顔をしているけれど、迷惑そうな顔はしていない。もし本気で押せば行けるかもしれない。

けど多希くんを犯罪者にする訳にはいかない。

「今日も自習してくのか?」

私は頷く、もう少し多希くんと話したかったけれど、次の授業の準備があるからと奥のスッタフルームに消えていった。

私は席に取り残されて、周りの子達が次々に帰っていく、この瞬間が嫌いだ。

友達同士で帰る者、親の迎えの車で帰る者、バスで帰る者、そのどれでもない私だけれど、それを別に羨ましいとは思わない、むしろ自分で今の状況を選択していることにちょっとした優越感もある。

ただ、心が地面から離れてしまった様な、座りの悪い心地がするんだ。