「今日は婚約者のラウルと、会うの。貴女たちも、同席してね」

 メイヴィス様の婚約者ラウル王子は、この国セレンディアの第二王子だ。

 いわゆる、王太子のスペアという立場だけれど、その政治手腕は有名で、外交関係では若くして中心人物として数えられているらしい。

「「かしこまりました」」

 私たち二人は手分けして、朝の準備を開始する。

 今日のドレスは、堅苦しくない形の流行りの青い小花柄を選んだ。メイヴィス様も無言だったけど、目を細めて満足そうだ。

「そうね。せっかくだから、あなた達も可愛い恰好をするのはどう? このお仕着せじゃなくて……ラウルの近衛騎士たちは、とっても格好良いのよ。せっかくだから」

 私とセイラは、どうしようと顔を見合わせた。

 とても魅力的なご提案だけど、私たち二人は仕事中だ。

「……申し訳ございません。メイヴィスお嬢様。私たちはこの通り仕事中ですし、ミランダさんに怒られてしまいますので」

 髪を整えていたセイラが、代表して答え鏡越しに申し訳なさそうに微笑んだ。